仙台高等裁判所 平成2年(ネ)69号 判決 1990年11月30日
主文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、主文同旨の判決を求め、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の主張は、原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。
理由
当裁判所は、被控訴人の請求を棄却すべきものと判断する。その理由は、次のほかは、原判決の理由と同一であるからこれを引用する。
一、判決五枚目表二行目の「及び」の次に「第一五号証、」を加える。
二、同六枚目表一行目の「区」の次に「新宿」を加える。
三、同六枚目表三行目から四行目を次のとおり改める。
「4. 本件株主総会当時、被告の株主は総数五四〇名で、各地に散在し、只見町にも数名、福島県内には数十名の株主がいたが、被告の本店移転後の第二回以降の株主総会が東京都内で開催されたことについて、株主から、いわゆるクレームがついたことは、本件のほかにはなかった。
5. 本件決議は、発行済株式七六八万株中四八八万五〇〇〇株を有する出席株主二〇六名(委任状による者を含む)全員一致で成立した。」
四、同六枚目表一〇行目以下を次のとおり改める。
「商法二三三条は、取締役による恣意的な招集地の選定を防ぎ、株主の総会出席の便を図るための規定であるから、特段の事情のない限り、定款に別段の定めがないのに本店の所在地又はこれに隣接する地以外の地を招集地と定めてした株主総会の招集手続は、重大な手続違反に当たるものといわなければならない。
しかしながら、本件のように、本店所在地が東京都中央区銀座から福島県南会津郡只見町に移転され、これにより、昭和五〇年に同町を招集地として株主総会が開催されたが、株主の希望により、次回の株主総会が東京都内を招集地として開催され、以後、東京都内を招集地とする株主総会が昭和六二年までの一〇年以上も継続して開催され、これについて株主からの特段のクレームもなかったという事実関係のもとにおいては、同法二三七条二項による許可を得た株主が、従前の例に従い、東京都内を招集地として株主総会の招集をしたとしても、これが、恣意的な招集地の選定に当たり、株主の出席の便を害するものということはできない。
そうすると、本件株主総会招集手続の違反は、重大なものではなく、また、右の事実関係のもとにおいては、その違反は、決議に影響を及ぼさないものといわなければならない。
右によれば、同法二五一条に基づき本件決議取消しの訴えの棄却を求める抗弁1は理由がある。
五、よって、主文のとおり判決する。」